『たったひとつのことしか知らない』
本田/著・講談社アフタヌーンKC/刊・1巻完結

 

この『たったひとつのことしか知らない』は、月刊アフタヌーンという雑誌に読み切りで掲載された作品。読み切り1作をそのまんま単行本にしてあるので、63頁しかなくて価格も安いんだ。紙の本だと200頁前後ないと単行本にならないけど、電書だとこういうとこ便利だよね。

で、内容なんですが。これだけ短いと、内容を説明するとそのまんまネタバレになっちゃうんだよねえ。これは絶対にネタバレしたくない漫画で、知らないまま最後まで一気に読んで欲しいのよー。

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それでもごくごく簡単に説明しておくと、小学生のとき数週間だけクラスメイトだった男性2人、藤ノ木と赤岩の友情のお話なのです。

転校生の赤岩はすぐにまた転校することになっちゃって、でも藤ノ木がときどき電話で話そうって約束してくれて泣きながら転校していくの。それ以来20年、ホントにときどき、藤ノ木には赤岩から電話がかかってくる。それも、非通知で。

平凡なサラリーマンの藤ノ木は、いま赤岩がどこで何をしているのか、まったく知らない。電話番号さえ知らない。いつも一方的に、赤岩から電話がかかってくる。数週間か、数ヶ月か、思い出したようにときどき。

ホンットにそれだけの話なんだけどね。でも、それだけじゃないんだよね。あああああネタバレしたい。でも、したくないw だってホントに知らずに読んでもらいたいんだよー。ホントにすごくいいお話だから。さくっと読めちゃう63頁。めっちゃおすすめです。

 


たったひとつのことしか知らない (アフタヌーンコミックス)

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『角の男』
山うた/著・新潮社バンチコミックス刊/2巻完結

 

こちらはファンタジー、でいいんだろうな。中華系の、架空の国でのお話。タイトルの『角の男』である「角アリ」角族のジャオと、「角ナシ」のユエ、2人の物語。なんかもう、いろいろ泣けます。ホント、泣ける漫画。

舞台となってる世界では、角のないヒトのほかに、角がある角族という人種が共存してる。ただし、角ナシであるユエが暮らす龍帝国では、角族は角アリの「鬼」と呼ばれ、蔑まれている。

物語は、鉱山で鎖につながれ奴隷として働かされているジャオと、国家機関のエリート研究者になったユエが再会するところから始まるんだ。

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でも、ジャオは自分が鬼狩りにあって奴隷に堕とされたのはユエのせいだと思ってる。だからユエを激しく憎んでる。ユエのほうは、ジャオに会いたくて会いたくてたまらなくて、とにかくジャオに再び会うために自分のできることを最大限やってきたっていうのに。

2人の間に何があったのか。なぜジャオは奴隷にされてしまったのか。奴隷からさらに家畜へと堕とされようとするジャオを救い出しその身を守るために、ユエはやっぱり自分にできる最大限のことをするって決める。だからユエは自分を偽り嘘をつき、ついには自分の命までも削っていく。

純粋でまっすぐで曲がったとこなんかまったくない、いや曲がることなんて到底できそうにないジャオと、そんなジャオが好きで好きでたまらないユエ。

この『角の男』は、2人が国家や時代に翻弄されながらあらがい続けるその姿が、読者に向かって超ストレートの剛速球でガンガン投げつけられてるような漫画。2巻で完結してて短いんだけど、読み応えあります。超おすすめ。

 


角の男 1巻: バンチコミックス

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『超嗅覚探偵NEZ』
那州雪絵/著・白泉社花とゆめコミックススペシャル/刊・3巻完結

 

これはちょっとカラーが違うかな。ジャンルは少女漫画。BL要素はまったくないバディもの。主人公の1人は警察官だし。でもめちゃくちゃにえぐすぎる犯罪捜査なんかは出てこないので、読みやすいと思う。

主人公の松下操は、タイトル通りとんでもない嗅覚の持ち主。犬並みどころか、もしかしたら犬よりすごい。なにしろ、最大周囲2km以内の匂いならなんでも嗅ぎ取れちゃうらしいから。

その、嗅ぎ取れちゃうらしい、っていうのがクセモノなんだよね。嗅覚って、視覚や聴覚と比べて数値化が難しく、ほかの人と共有しにくいから。誰かがそれを「いい匂い」だと感じても、同じ匂いを全ての人が「いい匂い」だと感じるかどうかはわからないもんね。

それなのに、匂いにはものすごい情報が詰まってる。操は、目の前にいる人が昨日どこで誰と会って何を食べていまどんな気分なのかが、全部匂いでわかっちゃうんだよ。しかも、本人は嗅ぎたくなくても、呼吸をすれば匂いは勝手に入ってきちゃうんだから、ある意味始末が悪い。

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警察官の神保裕貴は、松下操の高校の同級生。ある事件を追っているときに操と再会し、その嗅覚を試させたところ犯人逮捕に結びつく。神保の上司である芳谷要は、操を「しゃべる警察犬」として利用することを神保に持ちかける、っていうのがこの漫画の始まり。

そりゃもう、警察犬が意志を持って捜査に加わり、しかも嗅ぎ取った情報をしゃべってくれるんだから、こんな便利なことはない。ないんだけど、やっぱりいろいろ厄介なんだよね。人間は嘘をつくことができるから。そして、嗅覚ってものを客観的に評価できないから。

操が「匂いでわかった」って言っても、それが通用しないことしきり。ほかの人はたいてい信じてくれない。信じてもらえないことに操はずっと傷ついてるんだけど、じゃあ自分の超人的嗅覚について黙ってりゃいいのに、っていうことが操はできないの。

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本人が黙ってれば、嗅覚なんて誰にもわからないことなのにね。でも操は、自分の嗅覚を使って捜しもの(主に逃げたペット)専門の探偵なんてやってる。バカ正直で頑固な操は、自分が持って生まれた能力を、なんで隠して生きなきゃいけないんだって思ってる。

まあ、ぶっちゃけて言うと、ほかのことができないんだと思うよ。この操くん、かなりのダメ男で。単純で惚れっぽくって、おまけに自分の身の回りのことすらちゃんとできない。だから自分の持つ最も優れた能力を使って生きようとしてるんだけど、もとが不器用だからどうにもこうにも。

それに、もしその人間離れした嗅覚が公に取り沙汰されるようになると、今度は人間扱いしてもらえなくなるでしょう。文字通り、珍獣扱いだよね。それも嫌なんだよね、操は。ただもう、自分が自分らしく生きたいだけなのに、それが本当に難しいっていう、かなり厄介な個性の持ち主なんだよね。

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そんな操を、利用しようとしながらしきれない神保がいい味を出してくれてる。すぐにぐだぐだになっちゃう操を叱咤しておだてて引っ張り上げて、なんだかんだ親身になって面倒をみちゃってんの。

この『超嗅覚探偵NEZ』、3巻で完結してるんだけど、なにしろその3巻が出るまで9年もかかったという作品なので、どういう着地のしかたで完結するのか、読んでてちょっとハラハラしたんだけどねえ。でもちゃんといい終わり方してます。これもとってもおすすめです。

 


超嗅覚探偵NEZ 1 (花とゆめコミックススペシャル)

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