小野不由美/著・新潮社新潮文庫/刊

 

18年、待ちに待ってついに登場した十二国記完結編(たぶん)の『白銀の墟 玄の月』。もう十二国記ファンは速攻で飛びついて貪るように読んだことでしょう(私もだ)。

しかし発売日当日に蝕が蓬莱を直撃、いや台風19号が日本列島を襲い、発売日当日に本を手に入れられなかった人や、手に入れられても読むどころじゃなかった人も、きっとたくさんいたはず。被害に遭われた方々は本当にいたましい限りです。お見舞い申し上げます。被害に遭わなかった我々もなんだかもう、読む前から覚悟を問われてる感満載だったかも。

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私は幸運なことに台風の被害に直面することなく、発売日当日に『白銀の墟 玄の月』1巻2巻を入手。でもやっぱりあの状況では落ち着いて読むこともできず日付が変わってから読み始めたんだけど、読み出したら止まらなくて一気に読んでしまいました。

で、1巻2巻を読んだなによりの感想は、とにかく謎は深まるばかり、つかもう謎増えまくりで、一刻も早く続きを読ませてくれー! なんですわ。

でもとりあえず、3巻4巻が発売される前に、ここまで描かれている謎を整理しておこうとこの記事を書き始めたわけですね。以下、ネタバレのオンパレードなので『白銀の墟 玄の月』1巻2巻未読の人はここからは読まないほうがいいかも。

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いやーもう2巻まで読み切った人が全員間違いなく思っていることは、「驍宗様は本当に身罷ってしまわれたのか?」だよね。そんでもってもうひとつ、「阿選が本当に新しい王なのか?」ってこと。あ、驍宗様、阿選、っていう書き方に私のスタンスがありありと現れちゃってるw

まず驍宗様の安否について。これはもう、本当になんとも言えない。作中では「主上らしき人物が亡くなった」としか書かれてないから。断定はされてないよね。

深手を負って山中をさまよっていたところを里の者に保護されたその時期と状況、そして御髪は白で眼は紅という容貌。そこから主上でなはいかと推測されているけれど、本人は王であるとは名乗らず、また驍宗という字も名乗っていない。

さらに、もしその人物が本当に泰王驍宗であったとして、本当に亡くなったのか? という疑問も残る。亡くなったようにみせかけて、武器を求めた兵卒たちが違う場所に主上を移し匿っている、っていう可能性も当然考えられる。

そして王が崩じた場合の徴、つまり白雉が落ちる、そして他国の鳳が鳴く、っていうことについても、とりあえず2巻の中では記されていなかった。

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それからなんとも気になるのが、二手に分かれた泰麒と李斎の動向がそれぞれ描かれるその合間に、差し挟まれる市井の人たちのようす。自らが食うや食わずの状態だっていうのに、必ず淵にお供え物を流すのは何故? その淵の先に「誰」かがいるのでは?

ほかにも、白幟の母子が言っていた函養山に住むという立派な道士様っていうのも気になる。民が生み出した夢物語なのか、本当に「誰」かがそこにいるのか。そういう、まだどこにつながってるのかよくわからないエピソードが挟まれてくるから、どうにも油断がならーん。

あとはもう読み手の希望的観測っていうか、私自身は「泰王は驍宗様以外にいない」っていう線をどうしても維持したいので、亡くなったのは別人または亡くなったフリをして身を隠しただけ、つまり驍宗様はご存命ですってことになって欲しいもんだから、そのようにしか読もうとしてないっていうかw

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そしてもうひとつの謎、「阿選が本当に新しい王なのか?」について。これは最初、泰麒がそれを言い出したときは、とにかく白桂宮に入り込むための方便としてそんなとんでもないことを言い出したんだと、項梁ともども我々読者は思うわけだけど。

でもなんだかどんどん、不安を感じる展開になってる。泰麒が「阿選が新王である」と告げるその中身がいちいち理にかなっているようで、しかも泰麒自身のふるまいもすっかりその理の通りであるように見えてきて、項梁が感じる不安を読者も一緒に感じちゃうように進んで行ってる。

いやーでも、だからこそ、これはやっぱり泰麒のフェイクだよね、と私なんかは思ってるんだけど、どうだろう。だいたい泰麒は、蓬山と王宮しか知らない箱入り麒麟とはまったく違うからね@『魔性の子』。

泰麒が阿選に「貴方が王です。――残念ながら」って言ったとき、私はこれって景麒が言ってたことだよねってすぐ思い出した。『風の海 迷宮の岸』で、景麒が泰麒に王気について説明してたんだよね。景麒は最初の王を選んだとき、この人は駄目だって感じたけど逆らえなかった、王気とはそういうもので、たとえ憎んでいる相手であっても天が王と定めたのならば麒麟には逆らえない、みたいなことを。

泰麒はそのことを覚えていて、それを逆手にとったんだろうなって私は思った。それに、麒麟はあくまで天意を伝える器でしかない、麒麟自身にもわからないしどうしようもない、って周囲に強く印象づけてしまえば、少々突飛な言動であっても他の者たちはどれだけ訝しもうが手の出しようがなくなるもんね。

そもそも、いまの泰麒には角がない。角がないっていうことは、天意を受け取ることができない、はず。王気も感じられないって、泰麒自身が言ってたよね。そりゃもしかしたら、こっちの世界に戻ることで怨嗟から逃れ体調が回復し、角も再生し始めてるのかもしれないけど。そこはなんとも言えないけど。

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そしてやっぱり最大の謎は、「阿選は何故こんなことをやらかしたのか?」だよねえ。どうも、自分が玉座に着きたくて王を弑そうとしたのではなさそうだし。さらになにより琅燦の言。「摂理を動かさないことが肝要なんだ」って、つまり少なくとも琅燦はわかった上で「わざと」やってる、ってことだよね?

つまり、王自身には非がないのに玉座には居らず、王自身に非がない以上麒麟も病むことはない。けれど、王が玉座にいないことで政は放棄され国は荒れる一方。だからと言って非がない王を排して新しい王を起てることもできない。天の敷いた条理が完全に行き詰まってしまった、いまの状態を「わざと」作り上げ、しかもそれを維持しようとしている、ってことだよね?

いったい何のために?

もしかして阿選は、天に何かを問うているの?

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天帝が実在する、つまりこの十二国の世界を思うがままに作り上げた神が、おそらくヒトの形をとった何かとして実在しているようだ、っていうことは、前作『黄昏の岸 暁の天』で描かれてたわけだけど。

そして、実在するものであるのならば必ず過ちも犯すだろうということも、そこには描かれていたわけだけれども。

阿選はもしかして、天にその非を問うているんだろうか。天の神に、アンタは間違っているって、問い詰め認めさせようとしてるんだろうか。それはもう、自分の国を滅ぼしてまで。

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どうやら阿選の思惑に琅燦が絡んでいるってことは間違いなさそうなんだけど、そこにいったい何があるんだか。琅燦は『黄昏の岸 暁の天』でも、驍宗様が黙するように命じた内容を泰麒に勝手に伝えちゃってるし。

とりあえず琅燦は現状の維持を望んでる。はっきりと「我々にとって、驍宗様の命を取るという選択肢は存在しない」って、それも驍宗様って尊称つけて言ってるんだよね。それって逆に言えば「驍宗様が崩じるのは困る」ってことだよね?

だったら阿選や琅燦の支配下において実は驍宗様を監禁してる、なんて可能性も否定できなくはない? それも「魂を抜かれた」ように病んでいく人たちがいるわけで、そういった何かこう黄海あたりで採取された催眠作用のある薬草なんぞを使って驍宗様の意識を奪っちゃってるとか、そういうのってないんだろうか。

そのあたりに係わっているのかどうなのか、新たに登場した耶利やその主公であるらしい嘉磬にも何か重要な役回りがありそうなんだけど、いまのところさっぱりわからない。

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あーもー小野不由美先生の作品ってとにかく情報量が多いから、一通り読んだくらいじゃ読みこなせないんだけど、どっかにヒントがないか探しちゃうよねえ。

まあそれも、私なんかは自分にとってこうあって欲しい、要するにやっぱり戴国の王は驍宗様で泰麒も無事に角と指令を取り戻しめでたく2人で戴国を導いていくことになりました、っていう終わり方であって欲しい、っていう筋書き通りになってくれそうなヒントを探しちゃうってことなんだけどね。

うーん、あんまり考えたくないけど全然違うラストになっちゃうのかもしれないし。講談社ホワイトハート文庫版『風の海 迷宮の岸』のあとがきで、小野不由美先生は「一応シリーズのつもりで、オチも用意してあります」って書かれてるんだけど、オチってなんなんスか、オチってー。

早く、一刻も早く3巻4巻を頼むー。なんかもう3巻4巻が発売されるまでの1ヶ月足らずがほとんど苦行状態だわーーー。

シリーズ既刊感想一覧


白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)


白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)

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